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吹きおろしの風

吹きおろしの風

知床連山から海岸線に向かって吹く非常に強い局地風のことを指します。「羅臼おろし」とも呼ばれ、特に秋と冬から春にかけての寒暖差が激しい時期に強まります。「フレペの滝遊歩道」の草原地帯に生えている木の傾きからその風の強さが伝わります。

知床ではその風が木の成長を妨げる大きな原因です。しかし運動の初期に植えたアカエゾマツ林が防風効果を発揮し、若い木や古い森をおろし風から守っています。また、開拓者の方々が植えた国内外来種のカラマツも風除けになり、根元では知床本来のトドマツが成長しています。このようにして昔の方々が植えた木が今の、そして将来の知床の森を守ってくれています。

河畔林

河畔林

河畔林とは地下水や洪水による氾濫などの影響を受ける、川辺に生えている森林のことを言います。河畔林は、木陰が水面を覆うことで水温を低く保ち、水中の生き物たちの住みやすい環境を保ちます。また枝から落ちる昆虫は魚の餌になり、多くの生き物を支えてくれます。

イワウベツ川には、かつてカツラ(桂)を主とする豊かな河畔林がありましたが、開拓当時の伐採や、大洪水などによってその多くが失われました。私たちはイワウベツ川沿いの河畔林と生物相を復元する取り組みとして、カツラの植樹や防鹿柵の設置、人工的な瀬や淵を作ることなどをしています(ダイキン工業支援事業)。

断幹木

断幹木

断幹とは、木の幹を途中で切り樹冠部だけ切り落とす特殊な伐採方法です。森林を管理する際に、木の高さを低く抑えたり、森林内を明るくしたりするためにその手法は使われます。

これまでの私たちの森づくりでは、植えた大きな苗木を支えるために、支柱にするための丸太を運び込んで、それを地面に70センチメートル埋めて設置していました。その重労働をなくすために、間伐作業時に根元から3メートルの幹だけを残した「断幹木」を支柱にするアイディアを思いつきました。断幹木支柱を採用してからは、作業効率は格段に上がりました。限られた労力を最大限に活かすため、現場では日々工夫を重ねて、森づくりにチャレンジしています。

パイオニア・ツリー(先駆樹種)

パイオニア・ツリー(先駆樹種)

パイオニア・ツリー(先駆樹種)
開拓跡地などの開けた場所(裸地)に最初に侵入する木のことを「パイオニア・ツリー」とよびます。乾燥や土の栄養が乏しいなど、きびしい環境に耐えることができ、成長が早く、太陽の明るい場所を好むという特徴があります。裸地から森林に変わる最初の一歩とも言えます。

知床におけるパイオニアの代表種はシラカンバとケヤマハンノキです。道路脇や開拓跡地に多く見られ、「森づくりの道」の遊歩道でも簡単に観察できます。パイオニアの木は葉っぱを沢山落とすので、それによって豊かな土壌が作られることで他の植物が成長できるようになります。

1990年代頃はエゾシカの爆発的増加によって、多くの広葉樹がエゾシカの食害にあいました。しかし近年、エゾシカの生息頭数の減少傾向に伴ってシラカンバやケヤマハンノキなどの広葉樹が色々なところに生え始め、自然の力だけで森林化が始まろうとしています。

適応的管理(アダプティブマネジメント)

適応的管理(アダプティブマネジメント)

適応的管理(アダプティブ・マネジメント)とは、予測できない自然環境に対する計画や取り組みに対して、モニタリングによる評価を行い、科学的な検証によって計画や取り組みそのものを見直し、試行と実践を繰り返しながら管理する手法です。

知床の森づくりにおいて正解はありません。慎重に計画を立てたものでも、自然相手では全く予想外な結果がくることもあります。その為、大学の研究機関などの協力を経て、取り組んだことに対して科学的なモニタリングを行っています。そのように結果から学び、試行錯誤しながらその場所で最適なやり方を追求しています。

簡易魚道

簡易魚道

簡易魚道とは、サケの遡上の障壁となるダムなどに、緩やかなスロープを簡易的に作り、サケが上れるようにする、言わば「後付けの魚の通り道」です。

私たちの取り組みでも、イワウベツ川支流の盤ノ川にある橋を守るためのコンクリート壁に、簡易魚道を設置しています。その壁の高さは4メートルあり、サケの遡上できない高さでした。魚道設置の作業は、重機を用いずに沢山のボランティアに手伝っていただき、たったの二日間で完成しました。また使用した木材は森林再生作業で発生するアカエゾマツ間伐材を使っているなど、知床ならではの簡易魚道が出来ました。実は一度大洪水によって半壊し、作り直しています。イワウベツ川に赤く染まったサクラマスが数多く遡上する日を夢見て、私たちの挑戦は続きます。

馬搬

馬搬

馬搬とは、伐採した木を馬で運ぶことです。化石燃料の使用を抑え、土壌や根を傷つけずに生物多様性に配慮した作業が行えるので、自然と共存する環境にやさしい林業として再注目されています。

知床の森林再生でも実際に馬搬ができるか検証したところ、重機が入れないような木が込み合った造林地でも難なく丸太を運搬し、作業後の地面も土壌がほとんど踏み固められていませんでした。将来的には既存の作業道から遠い造林地では、新たに重機路を作らずに済む馬搬による施業を試したいと考えています。

樹皮食い

樹皮食い

エゾシカの樹皮食いは、主に餌が不足する積雪期に発生し、樹木の皮をはいで内側の柔らかい部分を食べる行動です。特にハルニレ、オヒョウなどの広葉樹を好み、雪が積もると被害は2mを超える高さになることもあります。樹皮が一周はがされてしまうと、水分や栄養が運ばれなくなり、その木は枯れてしまいます。

エゾシカによる食害対策は森づくりが本格的に始まった約30年前からの課題です。防鹿柵を設置したり樹皮保護ネットを巻いたりしますが、大雪によって壊れた柵の修繕や、経年劣化した樹皮保護ネットの巻き直しなど定期的な管理が必要になります。
エゾシカから森を守ることが森づくりの活動では最優先事項となっています。

ギャップ

ギャップ

ギャップとは、森に空が見えるほどの穴が開き、光が入る空間のことを指します。天然林ではギャップができることで日当たりがよくなり、森の下にいた木の成長や種の発芽が促され、新たな森がつくられていきます。

私たちの運動では、アカエゾマツだけの森を樹種多様な森に導くために、間伐を行うことで人為的なギャップを作っています。ギャップの中では、わざと倒れた木や枯れた木を片付けずに残します。こうすると、ほかの生物が利用できて、生態系の回復に役立つと考えられています。
ギャップを作った後は基本は自然に種が来ることに頼りますが、周辺にそういった環境がない場合は広葉樹を植えることで、それらがやがて種の供給源となり、アカエゾマツ林を樹種多様な森に導きます。

ササ地の掻き起し(かきおこし)

ササ地の掻き起し(かきおこし)

運動地には開拓後40年以上経ても森林化が進まないササ地が点在しています。背丈の高いササが隙間なく生えた場所では、樹木の種が散布されても光をめぐっての競争に負けて生育することができません。また厄介なことに、ササは地上に出ている部分を刈り取っても地下茎が残っていればすぐに回復する特性があります。
そこで当運動では、重機を用いてササ地を根ごと掻き起して、2週間ほど放置し地下茎を枯らしてから、栄養を含む表土を埋め戻す「ササ地の掻き起こし」の作業を行っています。
ササが衰退することで、他の草本や樹木が生育できる余地が生まれ、森林化が期待されます。