しれとこ100平方メートル運動ロゴ

1.森林の再生

 開拓以前の森を取り戻すために、森づくりとその移り変わりを記録する作業をしています。

森を育てる

針広混交林の形成

 1977年以降「しれとこ100平方メートル運動」では、取得した土地にアカエゾマツなどの針葉樹を中心に植え付けを行ってきました。1997年以降、本格的な森づくりが始まってからは、これらの木々に加え、広葉樹の植樹も行い、様々な樹種が入り混じる針広混交林が拡がる豊かな森を目指しています。運動で植えている広葉樹等の苗木は、運動地内の「苗畑」で育てており、オヒョウやハルニレといった広葉樹を中心とした苗木、約12000本を運動地各地の防鹿柵(ぼうろくさく)の中などの未立木地に植え込んできました。
 エゾシカの影響のため運動地内で苗木を植えられるのは防鹿柵の中に限られますが、防鹿柵に頼らない森づくりの手法として、針葉樹林に穴地(ギャップ)を空け、広葉樹の大型苗を植え込む方法が針広混交林の形成に向けた森づくりとして成果を上げています。

防風柵の設置

 また、一年を通して強い風が吹き下ろす草地などで木を育てるため、防風柵の設置も行っています。強い風が吹く厳しい環境の中では、ただ木を植えてもなかなか育ちません。風を止め、雪をためる防風柵を設置して、苗木の生長を助けています。
 豊かな森を目指すために、試行錯誤を繰り返しながら場所毎に異なる様々な環境に合わせた手法で日々の作業を進めています。

エゾシカ対策

 森づくり開始当初、特に多くの時間を費やさなければならない作業がエゾシカ対策でした。1980年代以降、その数を増やし続けていたエゾシカが苗木や樹皮を食べてしまうため、シカが好む木には「樹皮保護ネット」を巻き付ける作業を行いました。また、「防鹿柵」と呼ばれるシカ除けの柵を設置し、柵内への広葉樹の植え込みなども進めました。しかし、防鹿柵はエゾシカが高密度に生息する状況では有効な手段ですが、補修等のコストの面から防鹿柵を設置し続けることは難しくという課題も浮き彫りとなっていました。
 2005年、知床が世界自然遺産に登録され、運動地のエゾシカ対策にも転機が訪れます。2012年1月より、運動地を含む幌別・岩尾別地区でも世界自然遺産地域の植生保全を目的としたエゾシカの個体数調整(シカの数を適正な生息数とするため間引くこと)が始まりました。これは、「知床世界自然遺産地域管理計画」の一つとして定められた「知床半島エゾシカ管理計画」に基づき、遺産地域のエゾシカの管理として行われているものです。この取り組みにより、2014年頃からは、運動地周辺のエゾシカの生息密度は減少の兆しが現れ始めます。以前に比べるとシカの姿を見ることも少なくなり、そして、防鹿柵の外でもこれまでに目にすることがなかった小さな木々や草花が見られ始めるようになりました。
 現在も運動地周辺では個体数調整事業が行われ、エゾシカの生息密度を低く維持する努力が続けられています。開始から20数年を経て、知床の森づくりは、新たな段階を迎えています。

【現在・これから】
新たな森づくりに向けて

 森づくり開始から20数年を経て、シカという大きな壁の克服に一筋の光が差し始めています。ようやく本来の森づくりのスタート地点に立ち戻ったのかもしれません。ただ、20年数年前と違うのは、これまでの試行錯誤から得た知見と経験があることです。
 例えば、シカの影響が減りつつある現在、苗畑で育てているやや大きめの苗木を防鹿柵の外に樹皮保護ネットを巻かずに植えていく試みも始めています。その一部は、依然としてシカに樹皮を食べられることはあるものの、その影響は想像を超えるほどのものではありませんでした。
 そして、これからの森づくりとして、新たな木々が生まれ、育つ環境を人の手で作り出していく作業も始めています。これは、重機を用いてササ地を掻き起こしたりアカエゾマツ造林地の木々を広く切ったりすることで、これまで大規模には手を付けられなかった環境の森林化や多様化を目指した作業のひとつです。成果がはっきりと見えるのは、5年後10年後、あるいはもっと先になりますが、自然の力を活かしつつより早く広い場所で森を立ち上げていくための森づくりを今進めています。

森の様子を調べる

 エゾシカ対策を行いながら苗木を植え込む作業に加え、草本や木本などの生育状況の定期的な調査(モニタリング)を行っています。作業方法や、環境状況による木々の生育への影響のなどを明らかにし、運動地での最適な森づくりの方法や方向性を確認しながら一歩一歩進めています。

森づくり最前線!