しれとこ100平方メートル運動ロゴ

研究成果

 かつて乱開発の危機にあった知床国立公園内の開拓跡地を保全し、原生の森を復元する「しれとこ100平方メートル運動」に関する研究成果をご紹介します。

知床の森を復活させる効果的な植林方法の検証

知床の森を復活させる効果的な植林方法の検証

東京大学先端科学技術研究センター生物多様性・生態系サービス分野の小林勇太特任研究員と森章教授らの研究グループは、知床国立公園の耕作放棄地において、植栽密度(0~10,000本/ha)と植栽種数(1~6種)を変化させた31通りの植林シナリオ毎に、森林へと回復していく過程を「iLand」と呼ばれる森林景観モデルを用いてシミュレーションしました。その結果、炭素吸収量の回復は植栽密度の増加と共に早まり、生物多様性の回復は植栽密度の減少・植栽種数の増加と共に早まることがわかりました。これに加えて、生態系回復の軌道を著しく乱してしまう危険な植林方法が存在することを発見しました。特に、単一種の高密度植栽は、炭素吸収量の回復は早いものの、生物多様性の回復を100年以上も遅らせる可能性があることがわかりました。全球規模で深刻化する気候変動や生物多様性損失に歯止めをかけるうえで、改変された生態系の修復は有効な施策の一つです。本研究は、このようなグローバルな課題の解決に向けたローカルな取り組みに対し、科学の貢献を示した一例として広く活用されることが期待されます。本研究成果は、2022年3月23日付けでRestoration Ecology誌に掲載されています。

URL: https://www.rcast.u-tokyo.ac.jp/ja/news/report/page_01356.html